年齢で睡眠は変わる?高齢者特有の睡眠障害について

睡眠障害と治療

質の高い睡眠は、身体と心の健康を支え、毎日を活力に満ちたものに変える力を持っています。
しかし、加齢による睡眠の質の低下は、多くの高齢者にとって課題です。

この記事では、高齢者が直面する睡眠の問題を理解し、それらに対処するための具体的な方法についてご紹介します。

あなたやあなたの大切な人が、健康で充実した生活を送るために、質の高い睡眠の重要性とその確保方法を紹介しましょう。

高齢者の睡眠パターンの変化

年齢を重ねるにつれ、睡眠の質とパターンは変化します。

特に高齢者における睡眠の変化は、その健康と日々の活動に大きな影響を及ぼします。

加齢による睡眠パターンの変化を理解することは、高齢者自身やその家族、介護者にとって非常に重要です。ここでは、加齢によって生じる睡眠の変化について、その原因、特徴、そしてそれが高齢者の生活にどのような影響を与えるのかについて詳しく見ていきます。

加齢と睡眠パターンの変化

厚生労働省が発表している「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」にも記載がありますが、人間の必要睡眠時間は、加齢に伴い短くなる傾向にあります。

具体的には、小学生では少なくとも9時間、中高生では8時間、成人でも6時間以上の睡眠時間が最低限必要とされています。成人後は20歳ごとに、30分程度夜間の睡眠時間が減少するとの研究結果が示されています。
これは、加齢による生理的な変化や身体の概日リズムの変化によるものと考えられます。しかし、必要な睡眠時間は加齢に伴って減ってくる一方で、日本では高齢者は若者に比べて夜間の床上時間が長く、75歳では7.5時間を超えてしまっているとも指摘されています。[6]

高齢者は入眠困難、夜間の覚醒、早朝覚醒などの問題を経験される方が多くなります。ただし、このような症状を感じた時には、注意が必要です。上記で述べた通り、高齢の方の必要な睡眠時間は短くなっているため、「7-8時間眠る」ということは通常困難です。また、年齢が上がるにつれて、体内時計が変わり、その結果、睡眠のパターンも変化します。高齢者になると夜に早く眠りにつき、朝早く目が覚めるケースが多くなるとされています[1]。これは生理的な現象であり、病気ではない、ということも頭に入れておく必要があります。

Hood S, Amir S. The aging clock: Circadian rhythms and later life. J Clin Invest 127:
437-446, 2017.

上記グラフの通り、各種ホルモンの日中と夜の分泌のピークが高齢者は弱く、生活習慣の是正によるホルモンのピークを作り出すことの重要性になります。
また、メラトニンや血中血糖値等は若者に比べてリズムの前進があることを示しています。

睡眠パターンを改善するためのアプローチ

高齢者の睡眠パターンの変化に対処するためには、生活習慣の見直しや環境調整が有効です。

例えば、午前中に光をしっかりと浴びる、午前中に光をしっかりと浴びる、寝室の環境を改善する(適切な温度、静かで暗い部屋)、定期的な運動を取り入れる、カフェインやアルコールの摂取を控えるなどの方法があります。

推奨事項
  • 昼間にしっかり(30分以上)と太陽の光を浴びること
  • 長い床上時間は健康リスクとなるため、床上時間が8時間以上にならないようにして、必要以上寝すぎないように気をつける
  • 食生活や運動等の生活習慣、寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。
  • 長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中は長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす
健康づくりのための睡眠ガイド2023 18ページより

また、睡眠障害が深刻だと考える場合には、医療機関に相談することも重要です。
自分の睡眠時間は本当に不足しているのか?(65歳以上で、6時間以上眠れていたら十分です)
日中の活動が妨げられていないか?(睡眠が悪いせいで昼間に強い眠気などの不調がなければ、不眠とは診断されません)を考えてみてください。

なお、眠れていないという思い込みが不眠を悪くすることもあります。

加齢に伴う睡眠の変化に適切に対応しながら、生活習慣を改善し、質の高い睡眠を確保することで、日々の生活をより充実したものにすることができるでしょう。

高齢者の睡眠障害

高齢者は、必要な睡眠時間が減少する一方で、睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害、レム睡眠行動障害などの、さまざまな睡眠障害もよく見られます。
これらの問題は、体や心の健康状態、または服用している薬の副作用によって、悪化することがあります[4]。

高齢者の睡眠障害の原因

高齢者に睡眠障害が生じる原因は複数あり、一般的な医学的問題(病気に限らない健康問題)と関連していることが多いとされています。

一般的な医学的問題の中でも、

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 腎不全
  • 呼吸器疾患
  • 整形外科疾患や体の痛み

などが睡眠障害と関連していることが認められています。

例えば、高齢者に多い「いびき」は、心血管疾患や頭痛、記憶障害、抑うつへのリスクを高める閉塞性睡眠時無呼吸の症状であることがあります[1]。ある研究では、高齢者の30%以上に、睡眠時無呼吸があるという報告もあります[7]。いびきや睡眠時無呼吸は注意が必要です。

高齢者の睡眠障害がもたらす問題

高齢者の睡眠障害は、様々な悪影響を及ぼす可能性があります。

睡眠障害によって引き起こされる過剰な昼寝(1時間以上の昼寝)は、高齢者にとって認知機能の低下や将来の認知症のリスク増加といった重大な影響を及ぼす可能性があります[3]。

さらに、不眠の悩みを抱える高齢者は、

  • 転倒のリスク
  • 集中力や記憶力の問題
  • 生活の質の低下

などにも直面することがあります[5]。

高齢者の睡眠障害の治療とケア

睡眠障害の原因に基づいた治療

出典:(C) The Japanese Respiratory Society

睡眠障害の治療には、症状の原因を取り除くことが重要です。
病気による影響や薬の副作用が原因であれば、それらの治療が成功の鍵となります。
例えば、高齢者に多いとされる睡眠時無呼吸の場合はCPAP(持続気道陽圧療法)が有効です。必要に応じて睡眠薬の使用を検討することもありますが、慎重な判断が必要です(高齢者に漫然と投与されやすいベンゾジアゼピン系の睡眠薬は禁忌となるため、注意が必要です)。個々の状況に合わせた治療計画を立てることが重要です[5]。

非薬物療法の活用

高齢者の睡眠障害に対しては、まずは非薬物療法が積極的に推奨されます。
生活習慣の見直し、特に睡眠衛生の改善が重要です。
就寝前のルーティンを確立する、寝室環境を整える、カフェインやアルコールの摂取を控えるなど、睡眠を促す環境を作ることが効果的です。
認知行動療法を通じて、不安やストレスを管理する方法を学ぶことも、睡眠障害の改善につながります。

薬物療法の適切な使用

薬物療法は、他の方法で改善が見られない場合に検討されます。
しかし、高齢者においては、薬剤の副作用や既存の薬剤との相互作用によるリスクも高いため、慎重な使用が求められます。
睡眠薬は短期間の使用に限定されることが多く、長期使用は避けるべきです。
医師は、個々の患者の状態に応じて、最も適した薬剤を選択し、その効果と副作用を定期的に評価する必要があります。

まとめ:高齢者の睡眠とその重要性

高齢者の睡眠は、健康と生活の質に直接的な影響を及ぼします。

この記事を通じて、高齢者における睡眠パターンの変化、睡眠障害の原因と影響、そしてその治療とケアについてご紹介してきました。

高齢者の睡眠に関する知識を深めることは、自身や家族が直面するかもしれない問題への理解を深め、適切な対策を講じるために非常に重要です。

加齢による睡眠パターンの変化は、多くの場合避けられないものですが、生活習慣の見直しや環境調整によって、質の高い睡眠を得るための改善策は存在します。年齢相応の自分にとってあった睡眠はどのようなものなのかを考えることが重要です。

また、医療提供者との協力により、睡眠障害に対する適切な治療を受けることも可能です。睡眠は、高齢者が活動的で健康的な生活を送るための基礎を築きます。

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